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撮影やスタジオに関する用語などを簡単に分かりやすく解説したホワイトペーパーを作成しました。
特にこれから映像業界に進みたいと考えておられる方々のお役にたてれば幸いです。



ライト&電気関連

 

Hzヘルツ(Hertz/Hz)周波数

電気が1秒間に波打つ回数のこと。
東日本にある北海道、東北、東京の3電力会社は50Hzで、それ以外の西日本各社は60Hz。
周波数が分かれている国はめずらしいです。明治時代に東京地区がドイツ製、大阪地区が米国製の発電機を
それぞれ選び、発電の方式が違うことから周波数が分かれました。
違う周波数の電気を送り込むと送電網内の電気の流れが乱れ、停電などを起こすおそれがあるため、
同じ周波数に変換する必要があります。


AC
alternating current)交流

交流は時間とともにその大きさと方向が周期的に変化する電流です。
これが上記にのべた周波数をもっている電流です。発電所から、一般家庭に流れている電気は交流です。
理由は交流の方が電気的なロスが少なく都合がよいからです。発電所から数万ボルトの電圧で電気を送電し、
変電所を経て、家庭の近くの変圧器にかけて100Vの電圧にさげて供給されています。

交流で動く電化製品は、冷蔵庫、扇風機、掃除機、白熱灯、蛍光灯、エアコン、モータはほとんどが交流で動きます。


DC
(direct current)直流

直流は、時間的に流れる方向が変わらず、方向と同時に大きさも変化しない電流です。
代表的なものは、乾電池や充電池で、プラスとマイナスが明確に決まっている電流です。
パソコンやテレビなどの電化製品は直流で動きます。
そのため、コンセントからACアダプタを介してDCに変換し、使用します。


アンペア(ampere)

電流の単位。Aで表します。


ボルト(volt)

電圧の単位。Vで表します。


ワット(watt)

電力の単位。Wで表します。消費電力とも呼ばれます。

これらの関係式は、電力(W)=電圧(V)x電流(A)となります。
例えば、消費電力が1,000Wのドライヤーは、通常日本の場合電圧は100Vなので、
1,000W=100Vx10Aとなります。


ケルビン(K)色温度

ある光源(ライト)が発している光の色を定量的な数値で表現する単位。
単位には熱力学的温度のKケルビン(kelvin)で表します。

一般的には、寒色系の色ほど色温度が高く、暖色系の色ほど色温度が低いです。
日常的に目にする赤い炎は、炎としては最も温度が低いものです。

自然界では、高原の空の正午の太陽の光はおよそ6500Kと言われ、
朝日や夕日の色温度は概ね2000Kと言われています。


ルーメン(lm)

照明器具そのものの明るさを示す単位。日本語では光束と言う言葉になります。ルーメンの値が大きいほど、
人間の目で明るく見えます。
ルーメン値を照明器具の消費電力で割ることで、1W当たりのルーメンを割り出すことが出来ます。
この値を「発光効率」と呼び、光源の省エネ性能を表す際に使われます。

人間の目では、黄緑色付近の光が最も明るく感じ、青や赤に近づくほど暗く感じます。
ルーメンは人間の明るさを定量化した数値です。

ルクス(lx)

光に照らされた面の明るさを示す単位。
ルクスの値が大きいほど、光の当たっている部分がより明るい状態ということになります。



ライトの種類

 

タングステンライト

一般家庭で白熱電球と同じ構造のライト。
ガラス球内のフィラメント(抵抗体)に電気を流すことによる摩擦=ジュール熱による輻射を利用したライトです。
フィラメントは2200-2700°という高温になりますが、その抵抗体として銀灰色の非常に硬く重い金属である
タングステンが使用されていることから、業界では「タングステンライト」と呼ばれています。

寿命は2000時間ほどで、タングステンが蒸発し、折損(いわゆる球切れ)することで寿命になります。
抵抗体を「発熱」させるため、当然熱が発生しスタジオで使用する場合は、高温になりますし、
電気のほとんどが熱に変換されるため、消費効率も良くありません。エネルギー変換比は、熱90%:可視光10%。

ただ交流として使用でき、調光器も使用でき、バラストなどの整流器を必要としないシンプルな作りのため、
現在でもスタジオでは普通に使用されています。

一般的なタングステンライトの色温度は、3200Kと言われています。タングステンライトを使用して、
スタジオで昼間のシーンを撮影する場合、ライトの前にブルーのフィルターを付け、色温度を上げて撮影します。


デイライト=HMI

Hydragyum Medium Length arc Iodide additives lightの略で、通常業界ではデイライトもしくは
HMI(メタルハライド)ライトと言われています。
ドイツオスラム社の商標名でしたが、その後、一般的に使われるようになりました。
HMIの代表的なメーカーはドイツのアーノルド&リヒターARRI) でしょう。
非常に強力な明るさがあり、太陽光に近い概ね5500-6000Kの色温度があります。

消費電力に対する光量もハロゲンライト(ハロゲンガスを注入して光量を増したタングステンライト)の4倍ほどになり、
スタジオでの昼間のシーンや屋外ロケでは今や定番のライトになっています。

かつてはフリッカーが出たのですが、現在は解決されています。
ただカメラのコマ数、シャッター開角度、電源周波数などが影響するため、注意が必要です。
またバラスト(電圧安定期=整流器)と共に使用しなければならないため、タングステンライトよりも高価です。

Pict様のページにHMIのハイスピード撮影のページが参考になります。


蛍光灯ライト

蛍光灯をスタジオ撮影で使用するライトで、代表的なメーカーはKINO FLOです。
キノフロは1980年代からハリウッドの映画業界で使用されはじめました。
特徴は、タングステンに比べて消費電力が少なく、寿命も長い点、初熱量も少ない点が挙げられます。
また蛍光灯独特の照射面が大きく影が柔らかいため、ディフューズする手間もはぶけるので、
素人も扱いやすいライトです。

ただし、HMIと同様にバラスト(安定器)が必要になるため、一体型では灯体が重く、
別置きの場合はセッティングに多少時間がかかる点があえて言えばデメリットでしょうか。
またHMIのようなカッタースポットのようなキレはなく、ソフトなライティングに向いています。

キノフロは、通常の蛍光灯とは異なり、緑色(グリーンスパイク)を極力抑えた製品になっており、演色性があり、
安定した色温度が得られています。


LEDライト


LEDは、Light Emitting Diodeの略で、日本語で発光ダイオード。
順方向に電圧を加えた際に発光する半導体素子で、それをライトに応用したものがLEDライトです。
特徴は、他の照明に比べ圧倒的な低消費電力、長寿命です。
その他、耐衝撃性(真空やフィラメントが必要としないため)、高速応答性、小型点光源、
無紫外線(紫外線が発生しないので肌にやさしく、虫がよってこない)など、数え上げれば切りがないほど、
その利点が挙げられます。

一般家庭の電灯需要も、2011年の震災以降、白熱電灯からの急激なLED電球の切り替えがおきており、
またこれは世界的な傾向であると言われています。

LEDライトで最も信頼がおけるものは、撮影機材のアカデミー賞とも言えるエミー賞など数々の賞を獲得した
LITEPANELSでしょう。
ホワイトハウスや宇宙ステーションでも使用されています。

LED撮影用照明は、まだまだHMIなどの強力な光量は開発されておらず、主な用途は小型スタジオ、
一般家庭を使用したロケセット、報道用ENGに使用する取材用ライトの光源が現状メインです。

一般家庭で、通常一つのコンセントからの供給電力は1500wですが、タングステンであれば1Kw(1,000w)が
2台も使用できません。
ところがLITEPANELS Sola6では、わずか75wの消費電力で、650w相当の光量を実現できています。
タングステンに比べ、約1/10の消費電力での使用が可能になります。

またENGクルーの取材ライト、solaENGをIDXのe10で使用した場合、4時間もの使用に耐えられます。
おそらくタングステンのアイランプでは同量の光量で30分も持たないでしょう。

今後、LEDライトは、一般ライトの急速な発達とともに照明のメインの定位置を確保していくことが予想されますし、
期待したいライトです。



スタジオ、ライト、周辺機器

 

フレネルライト

通常のスタジオのスタンドに設置しているライトで、フレネルレンズ(同心円上に刻みを入れ軽量化したレンズ)がつき、
裏側にフォーカスコントールがあり、光を絞り強力に一点に照射したり、分散して柔らかくする機能がついています。
またレンズの淵に羽(バンドア)があり光を遮ることも出来ます。


ボーダーライト(Border Light)

舞台照明にも同様の名称がありますが、スタジオ上部や下部に数列にわたって吊るしたり、床置きにした照明。
ステージ全体を均一な光にしたり、ホリゾントの背景色を均一にするためのライトです。
フォーカスコントロールやフレネルレンズはなく、羽もありません。


キメラ(CHIMERA)

ライトバンクと言われるライティングシステムのメーカーであるキメラ。通常のライトが点光源であるのに対して、
ライトバンクは面光源で光ります。そのため、光が拡散し柔らかくなる効果を狙った製品です。
構造はライトの背面に反射板を設け光を拡散し、そのボックス状の全面にディフューザーで覆い、
一つの筐体化した製品です。


キューブフレーム

キメラと同様にディフューズライトなのですが、キューブフレームは1面ではなく、立方体すべてが点灯するため、
天井をのぞくすべてに柔らかい光が拡散します。キューブフレームはメディア・ガーデンが開発した製品で販売、
レンタルの双方を行なっています。


フィッシャーライト

ソフトライティングのフラッグシップとも呼ぶべきライティングシステム。
ハリウッドで生まれ、特にクルマの撮影には頻繁に使用されます。
日本ではメディア・ガーデンがホームベーススタジオになっています。


Dimmer


調光器といい、光を明るくしたり暗くしたりできます。
舞台照明など遠隔作業が出来るDMXやトライダックやスライダックとさまざまな調光器があります。


ゼネレータ

ゼネレータには、車両と一体型の大型電源供給式と、個別の持ち運びができる単体式小型ゼネレータがあります。

車両一体型 では260Kw(260,000w)という大容量ゼネ車から75Kwの中容量ゼネ車などがあります。
注意すべき点は、260Kwと言っても実質的に使用できる電力は、50Hzの関東エリアで160Kwが
使用可能電力であり、文字通り受け止めてはいけません。
使用するライトとゼネ車は照明部の方々と事前に打合せをとる必要があります。

また単体で持ち運びできるゼネレータは、通常は5Kwゼネ から900Wの家庭用ゼネレータがあります。


六角回転ミラー


ほとんどの方はその存在を知らないと思いますが、例えばスタジオに電車の中のシーンを作り、
照明を行う場合、電車の通過時の光を表現します。六角形で構成されたミラーを回転させ、そこに光を当てると
あたかも電車が移動した際の光の動きを感じさせることができます。撮影業界のある種の裏技的な装置です。


フラッグ


「旗」を意味するライティング道具。鉄枠で黒い布を張り詰め、基本的にはセンチュリーで固定します。
ライトからの光を遮りたい時に使用します。


レフ板(board reflector)

太陽やライトなどの直接光を反射させ、間接光として利用する際に使用します。
シーツのような白い布やカポックと言われる発泡スチロール板などもレフ板になりますが、一般的には金属製や
樹脂製の枠に反射材(アルミホイール状のもの)を張り付けたものを言います。
それ以外ではロケに便利なパラソル型のものなどディフューザーはさまざまにあります。


バタフライ

光を遮る暗幕を広範囲に設けたり、シルク、トレッシングペーパーを使用して光を柔らかくする面を作るための枠組み。


トラスパイプ

ライトを複数台天井に吊り下げるための器具。強度を保つため、2層構造になっています。


センチュリースタンド

不整地スタンドとも呼ばれるアメリカ製のスタンドです。通常のライトスタンドは平地を想定して作られていますが、
センチュリースタンドは、設置部が不整地であっても自由に高さ調整が出来るのが特徴で、先端のダボを使用し、
ライト以外でもカポックや黒フラッグを固定し、光の調整ができる非常に便利なスタンドです。

通常のスタジオではいまや必需品のスタンドになっています。


ホリゾント

舞台やスタジオで使われる背景用の布の幕または壁。通称「ホリ」と言われています。
映像表現的には空や空間を表します。語源はドイツ語のhorizontから来ています。

スタジオのホリゾントのスペックの表記に、3面R(アール)などという言葉が出てきます。
これは例えば縦面のホリと横面のホリのつなぎ目が局面(R)になっているかどうかを表記しているものです。
Rがあればそれだけ画面に広がりを持たせることができます。
床と正面のホリがRになっている場合、白ホリに佇んでいますと境目のない空間になり、注意する必要があります。
またホリゾントは光によっても構築でき、そのライトをホリゾントライトと呼ばれています。

一般的なCM用のホリゾントライトは、ボーダーライトで上と下からホリゾントに照明をあて、
企画意図にそった奥行空間をつくります。

ただし、CMや映画スタジオのホリゾントは、ペイントで塗ることを前提に作られていますが、
小規模なスティルスタジオでは 白ホリは白ホリのままで使用し、塗らせてくれないスタジオがありますので、
スタジオ選定の際にはお気を付けください。

小さなスタジオでよく使用されているのは、紙をロール状にして上から垂らす手法により、
さまざまな色の背景をつくるホリゾントです。
業界ではサベージ と呼んでいますが、これは厳密にはメーカー名であり、
他社にはセットペーパーなどのメーカーがあります。


キャットウォーク

通常キャットウォークは、劇場や工場施設の上部、ダムや橋梁などの高所や大型貨物機、
飛行船などに設置される狭い通路です。猫通り。

スタジオの場合、天井部に人が縦横に歩ける道を設け、美術セットやライトを吊るしたりします。
近年では昇降機の発達により、地面に居ながらにしてライトの上げ下げができるようになっています。
ちなみにスタジオの高さは、キャットウォークを最大値として高さを計測します。
メディア・ガーデンのキャットウォークではスタジオスタッフとライティングスタッフ、
美術スタッフのみがヘルメットを着用して登ることができます。


合成用デジタルキースクリーン

アナログ時代は、特定の色(Chroma)情報を持つ領域を他の画像と置き換える手法として、
置き換える領域を抽出するための信号をキー(Key)信号と呼ぶことから、この手法をクロマキーと呼んでいました。
現在ではクロマ信号でキーイングすることは少なく、実際にはultimatteや、Primatteなどの最新キーヤーで合成用の
トラベリングマット(移動マスク合成用マット)を生成します。

フィルム時代は、ブルーが使用されていました。
その理由として
1)フィルムプロセスで一番実現性の高い色であったこと(RGBの光の三原色の中で一番抜けやすい)
2)肌の色が補色の関係(特に黄色人種)にある事が大きいためでした。

最近グリーンバックが多く見かけますが、理由としてキーヤーの性能がよくなり、
ライティングの光量がブルーほど要らない為、広大な面積のバックで使用頻度が高くなっているからです。

デジタルキースクリーンは従来、毛足のある化繊の絨毯のような素材でしたが、火に弱く水に濡れると変色し、
汚れるとクリーニングが面倒なものでしたが、ハイパーデジタルキースクリーンは、
これまでのスクリーンの欠点をクリアーしたスクリーンも登場しています。
キーヤーもスクリーンも進化しています。


イントレ

映画「イントレランス」から出てきた用語で、建築業界では建物の足場で使用します。
鉄パイプで枠を作り、鉄板を載せ、高所から俯瞰撮影が出来るもの。
俯瞰撮影では移動が出来るクレーンを使用したりします。

ちなみにハリウッドで「イントレ」や「Intolerance(不寛容)」などと言っても通じません。
現地では文字通り「足場」を意味する「Scaffold」と呼ばれています。


箱馬
(apple box)

1尺(30.3cm)x1.5尺(45.1cm)x5寸(15.1cm)の大きさの空洞の木箱。
古くは歌舞伎の奏者が乗る山台から来ている説があります。
箱馬は、平台と呼ばれる3尺x6尺x4寸(サブロクと呼ばれる)板の台の基礎の足場として使用されます。

箱馬のタテヨコ、平台の厚さを調整すればさまざまな高さのステージを作ることができる便利なセットの基礎です。
基本的な平台の足場となる箱馬の向きは対角線上に立て方向、横方向で揃えて設置することにより、
縦揺れ、横揺れを防ぐことができる非常によく考えられた道具です。

日本音響家協会のデータファイル このサイトは特に歌舞伎に絞った説明ですが、
映像美術界にも共通する事柄であり、先人の知恵が偲ばれます。


マグライナー(Magliner)

アメリカのBackstageEquipment.Inc.が製作した撮影現場専用の台車です。
マグライナーにはモニター、レコーダー、ケーブルなどさまざまな撮影関連機器を載せることができ、らくらくスタジオ、
ロケで移動ができます。販売製品としては高価ですが、撮影をする際には非常に役に立つイクイップメントです。

1979年からマグライナーは作られ始め、ハリウッドを含め、ベストセラーブランドで販売されています。
マグライナーは大小さまざまな用途に応じた種類が販売、レンタルされており、約50種類ものマグライナーがあります。
撮影関連の台車ひとつをとっても、アメリカ人はこのような撮影周辺機器を作らせると、
実に痒いところに手が届く作り方をします。


カチンコ(Clapper Board)

同録撮影の際にはなくてはならない道具です。
撮影の際、カチンコの拍子木を打つことにより、画と音が一致し、編集時に音と画を同期するのに役立つばかりか、
シーンナンバーやテイク数もそのボードに記入することにより、編集時、
スクリプトの記録と一致しやすく時間の節約にもなります。

また3D撮影でもカチンコは重要です。
LとRの二つのカメラで撮影する3D撮影では2台のカメラの同期を画で合わせる必要があり、
GEN LOCKやTC同期を行なっていても、最終的に画で位置合わせをする際には重要です。
つまりバックアップとしてもカチンコは重要なアイテムであり、撮影現場ではなくてはならないものです。



撮影関連

 

カメラの撮影手法

カメラの撮影手法には4種類あります。
まずカメラを三脚上に固定して動かさない「フィックス」
パン棒を使用してカメラの向きを振ることを「パン」と呼びます。
上下に振ることを「ティルト」とも呼びますが、パン棒を使用するため、上下でもパンと呼ぶことがあります。
「パン」の語源は「パノラマ」から来ているそうです。

それに対し、カメラ自体を移動しながら撮影する手法を「ドリー撮影」と呼びます。
ドリーにはパネル上の板の上に三脚を設置し、カメラとカメラマンが乗って撮影するもの(移動車撮影とも言い、
マタドールドリーやディンキードリーがあります)や、油圧や電動で作動し、上下動や小型クレーンも設置できる
ドリー(パンサードリーやピューイドリー)があります。

最後に、カメラやカメラマンをクレーンに載せ撮影する「クレーン撮影」があります。
以前は大型クレーン上にカメラマンも乗り撮影を行なってきましたが、
最近ではリモートシステムが発達しリモートクレーンが大規模撮影では主流となっています。
(テクノクリーンやスコーピオなど)

また小型のクレーンでは、ウルトラクレーン、ユーロジブ、ジブアームなどのカメラのみを搭載し、
3m以下の撮影を行うコンパクトなクレーンもあります。


イメージセンサー(Image Sensor)

撮像素子と言われ、フィルムカメラにとってのフィルムにあたるものです。
レンズから入射した光を取り込み、電気信号に変換する半導体素子です。
イメージセンサーは大きいほどノイズが少なく、ディティールの描写能力が高まります。
またフィルムと同様に被写界深度の浅いボケを作りだすことが容易になります。
ただし、それだけカメラの筐体も大きく、高価になります。

フル35mm ■(EOS 5D,NikonD4 スティルカメラ ライカ版)36mmx24mm
スーパー35mm ■(ALEXA,REDONE,F35 デジタルシネカメラPLマウント)24mmx14mm
2/3インチ型(業務用ENGビデオカメラ B4マウント) ■8.8mmx6.6mm
1/2インチ型(中堅デジタルカメラ) ■6.4mmx4.8mm
1/2.5インチ型(一般的コンパクトデジカメ) ■5.7mmx4.3mm

参考:イメージセンサー比較 ガバサクさんのサイト

以上を見る限り、いかにフル35mmの面積が大きいかが分かると思います。
そんななか映像業界が驚愕したDSLRの走り、CANON EOS 5D Mark IIが登場します。
5Dは、フル35mmのサイズを持ち、フルHD撮影が可能となったのです。
またフル35mmなので、それまで使用されていたフィルムレンズと同等の画角で撮影ができるというメリットがあります。
もちろんフィルムと同等のボケでの撮影が可能です。

ただし、映像情報のクオリティは解像度、つまり収録フォーマットで左右され、面積的にはフル35mmよりも狭い
スーパー35mmの高性能デジタルシネマカメラですが、収録では非圧縮収録の他、4Kやすぐれた圧縮フォーマットの
ProResにも対応している機種もあるため、DSLRのほとんどの収録フォーマットであるMPEG4 AVC/H.264よりも、
合成を前提とした撮影には適しています。機材コストを考えれば当然ではありますが。
上記2クラスは、コストや企画(合成多用なのか、ポートレート的MVなのかなど)によりDPの方がチョイスする
領域が増えたと考えればいいのではないのでしょうか。

またイメージセンサーには大きくは、CCDとCMOSがあります。


CCD
イメージセンサー

Charge Coupled Device Image Sensor電荷結合素子と呼ばれ、画像を電気信号に変換する際に、
受光素子が光から発生した電荷を読み出すために名付けられました。CCDは、全ての受光部に蓄積された電荷を
同時に垂直伝送路に転送する「全画素同時露光一括読み出し」方式です。

この方式を「グローバルシャッター方式」と言い、CMOSによく使われている「ローリングシャッター方式」と異なり、
早い被写体の動きにも対応し画像が歪むことはありません。
またCMOSに比べ感度が高く、ノイズが少ないという特性を持ちます。

反面、消費電力はCMOSに比べて大きく、構造も複雑なため、センサーの価格も高価になっています。
またCMOSにはない、スミアやブルーミングを起こしやすいという短所もあります。


CMOS
イメージセンサー

Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor
相補性金属酸化膜半導体と呼ばれる撮像素子。
CCDと同様にフォトダイオードを使用しますが、製造プロセスと信号の読み出し方法が異なります。

CMOSイメージセンサーは、半導体微細加工技術が高度化した1990年代以降実用化された比較的新しい素子です。
CMOSの特徴は増幅された電圧を、画素選択スイッチのON/OFFにより、ライン毎に垂直信号線に転送される
「ライン露光順次読み出し」方式をとっています。

この方式を「ローリングシャッター方式」と言い、素早く動く被写体を捉えたり、カメラを左右にパンニングした際、
動く被写体が歪んだり、画面にひずみが発生する場合があります。またCCDに比べ暗部に弱く、ノイズが発生する
確率も高くなります。

しかし、CMOSは、その構造の簡単さからあらゆるデジタルカメラ製品に使用され、
ついにCCDのシェアを追い抜いています。
また最近ではCCDでしかできなかった「グローバルシャッター方式」のCMOSも各社から発売され始めています。

ISO感度

国際標準化機構(ISO)で策定された写真フィルムの感度の規格。以前はASA(アメリカ標準規格)や
DIN(ドイツ工業規格)が並存されていましたが、現在はISOで統一されています。
ただ一般的には以前のASA感度と同じ数値をよく用いていて、ISO100/21°とは、ASA100/DIN21°なので、
以前のASA感度数値とイコールと認識したほうがてっとり早いです。


Gain(
ゲイン)

ビデオカメラでのISO感度のような数値です。db(デシベル)で表します。
ISOと同様に、+の数値を上げると暗いところでも撮影が出来ますが、ISOと同様にそれだけノイズが出てきます。


絞り(Iris / aperture)

絞りとは、カメラのレンズに入射する光量を調整する機構のこと。
絞りバネと呼ばれる光を遮る羽根がレンズの中に組み込まれており、この開口部(aperture)をコントロールする
ことにより、さまざまなレンズによる光の効果を行います。

ちなみに絞りで言われるF値とは、レンズの焦点距離を有効口径で割った値で、
レンズの明るさを示す指標として使われています。ちなみにF値のFとは焦点を意味するFocalの頭文字から来ています。


ホワイトバランス

人間の目は非常に柔軟にできていてさまざまな光源下においても、その色の本質を認識します。
しかしカメラはその光源をそのまま忠実に再現するため、タングステン光下ではアンバー系に写したり、
蛍光灯下ではグリーン系に写したりします。

フィルムカメラの時代では、カラーメータによって色温度を測定し、その色温度に適した色補正フィルターを
装着したり、ライト自体にフィルターを施したりしていました。しかし、デジタルカメラではそのカメラ自体で
色補正が可能となったために作られた機能がホワイトバランスです。

ホワイトバランスは、さまざまな色温度の光源のもとで、白色を正確に白く映しだすように補正する機能です。
DSLRなどにはさまざまなホワイトバランスの機能がありますが、いくつかをピックアップします。


オートホワイトバランス(AWB)

コンデジでは一般的に使用される画像エンジンまかせのオートで行うホワイトバランス機能。
各メーカーやカメラによりバラツキがあります。


プリセットホワイトバランス

今おかれた晴天、曇天、電球、蛍光灯などのさまざまな環境下での光源をあらかじめ指定して、撮影を行う。


マニュアルホワイトバランス

撮影場所で、白い色基準(純粋白もしくは18%グレー)のパネル等を用い、
光源(太陽やライト)から反射したその白色を撮影、選択して、撮影する。


色温度指定

カラーメーターで測定した色温度を直接入力して色温度の適正化を行う。


インターレース方式とプログレッシブ方式(Interlace scan/Progressive scan)

デジタルビデオカメラのスペックを見ると、1920X1080/59.94iとか、29.97pという接尾辞が付いています。
このiにあたるのがインターレース方式であり、pにあたるのがプログレッシブ方式です。

インターレース方式とは、画像伝送においてデータ量を増やさずに描画回数を増やす技術です。
通常日本のビデオ映像は30フレームで1秒を表しますが、その30フレームを60フィールド(1フレーム2フィールド)にし、
奇数段と偶数段を各々スキャン(走査)して1フレームを形成する方式です。
これはテレビ開発初期に膨大なデータを伝送できなかったためと、書き込む回数を多くすることにより、
早い動きに対応した映像を実現しようとしたからです。

対して後発でできたプログレッシブ方式は、上から順に30フレームを送る仕組みです。
この方式は映画のフィルムが1秒24コマで成り立つパラパラ動画と似ています。

インターレースはこれまでのテレビ用ビデオカメラで使用されていた方式で、質感として「生っぽい映像」と言われています。
報道やスポーツなどの映像には、この生っぽいリアルに見える映像が適していると言われています。
対してプログレッシブは、最初と最後の走査線の読み込みの時間差があるので、
見た目には残像があるようなフィルムっぽい映像になります。
ですからドラマやCM、MVなどのエモーショナルな質感を要求する動画には適していると言われています。

ちなみに最近のNHK大河ドラマ(「坂の上の雲」など)では、プログレッシブカメラを採用し、
フィルムっぽい質感で撮影されています。
また最新のデジタルビデオカメラでは、用途に応じて60i(59.94i)や30p(29.97p)を使い分けることが出来ますし、
1280X720では、60p(59.94p)という撮影もできます。
これを編集で30pに設定すれば、2倍のハイスピード映像が可能になります。


ボケ(Bokeh)

写真におけるボケとは、画面の一部を意図的にぼかす表現です。例えば風景の中で被写体のモデルは
ピントがあっているのに背景がぼけているような写真が典型的なボケを生かした写真です。
対義語はパンフォーカス(画面のすべてにピントがあった状態)です。

技術的には、意図的に被写界深度を浅く設定をすることでそのような映像を撮ることができ、
映画撮影での同様な表現は「シャローフォーカス」(Shallow focus)と呼ばれています。

効果としては被写体のみにピントがあっているため、主役を浮き立たせる効果があります。
またボケ表現はやわらかい印象を与え、パンフォーカスは硬い印象を与える効果があります。

ボケの作り方として3つ方法があり、
1)絞りを大きく開く(F値を小さくする)と被写界深度が浅くなる。
2)望遠レンズを用いると被写界深度が浅くなる。
3)被写体に近接するほど、背景がボケやすくなる。などの3点です。

またカメラの種類では、フィルムまたは撮像素子が大きいほどボケが大きく、
スマホなどの小さな撮像素子ほどボケが出づらいです。


レンズフィルター

レンズの先端やマットボックス面、もしくは後端などに装着して、通過する光をコントロールするものがフィルターです。
フィルターにはさまざまな用途がありますが、代表的な2つのフィルターをピックアップします。


偏光(Polarized Light)フィルター=PLフィルター

ポーラとも呼ばれ、光の表面反射を除去するフィルターです。装着すると露出量が下がります。
水面やガラスの反射による映り込みを除去できるため、ショーケース内の展示物撮影のようなガラス越しの撮影に
使用されたり、空気中の水蒸気の反射を除去するため、青空がくっきり見えたり、樹木や山肌、
建物のコントラストを強調する効果があります。


減光(Neutral Density)フィルター=NDフィルター

減光フィルターは、レンズに入る光の量を減少させるフィルターです。これを使用することで、
撮影の際の絞りを開いたりシャッタースピードを下げることが可能になります。
これにより明るいレンズを屋外で使用する際、光量を減らして晴天時でも開放状態に出来、
後ろをボカすことが可能になります。
NDフィルターは濃さの度合いによりND2,ND4,ND8などがあり、ND2は光量を1/2にすることができます。


DSLR

Digital Single Lens Reflex デジタル一眼レフカメラのことで、このカメラでHD撮影を行うことです。
本来、DSLRはスティル撮影のために作られたカメラなので、
このままムービー撮影をする際にはさまざまな支障が発生します。

1)フォーカス送りがオートフォーカス前提で作られているため、回転ストロークが短く使いづらい。
2)ズームも手動を前提にされているため、スムーズなズームは不可能。
3)動画画像をファインダーで確認できない。
4)HDMIからモニター出力するとカメラのモニターが使えない。
5)ライブビューのHDMI出力はフル画面ではない。
6)音声入力がステレオミニプラグでレベル確認がしづらい。

などの要素がありますが、DSLRムービー用のさまざまなサードパーティから補強リグが販売されていますので、
それらを用途に応じて使用することにより、効率的な撮影ができるような時代になってきています。
またNIKON D-4やEOS C300などの上位機種には、HDMIから、Kiproなどに収録すれば、
Prores収録ができる優れた機種も発売され始めています。

それよりも、非常に廉価で、特に被写界深度の浅いHDムービーが撮影できるようになったことは制作者にとっては朗報です。


雲台=ヘッド(head)

カメラと、三脚(トライポッド)の架台の間に装着し、カメラを自由な方向にパンやティルトが出来るものです。
ムービーカメラマンにとってヘッドは非常に重要な装置です。
スムーズなパンやティルトはヘッドの善し悪しによって決まると言っても過言ではないでしょう。

CM業界ではほぼ定番となっているのは、ドイツ製ザハトラーのヘッドです。
ザハトラーのヘッドの特徴のひとつに、他のヘッドがパン、ティルトをオイルで稼働させているのに対して、
機械式になっている点が挙げられます。オイルの場合、灼熱のロケ地ではオイルが膨張しオイル漏れを起こしやすく、
寒冷地では凍ってしまう可能性があります。
しかし、ザハトラーのヘッドは機械式なので気温の変化に関わらず、常に安定した動作を行うことが可能です。

ザハトラーヘッドの目印はヘッド部に「S」マークで識別が可能です。


マットボックス

カメラレンズの全面に装着し、4x4などの専用フィルターステージにフィルターを差し込んで使用することが出来たり、
全面上面とサイド面に取り付けられているフラッグによって、太陽光やライトがレンズ面にあたって
フレア(ハレーション)を起こすことを防ぐことができる非常に便利なリグです。
またフォーカス送りがスムーズに出来るフォローフォーカスも装着できます。

マットボックスは、本来シネカメラの専用グッズでしたが、DSLRにも装着できるものも販売しています。
DSLRは本来スティルカメラなので、このようなリグを装着することにより、
シネカメラライクな撮影ができるようになりました。


コーデック(Codec)

本来の意味は、符号化方式を使ってデータのエンコード(符号化)とデコード(復号)を双方向にできる装置や
ソフトウェアのことを指した用語でした。映像業界で言われるコーデックは、狭義では映像データの圧縮方式を指し、
広義ではそのファイル形式まで含む用語になっています。

スティルのデジタルカメラはわずか1カットのため、非圧縮の大容量RAWデータ(未加工の生データ)を収録することは
可能ですが、動画データでは秒24コマ以上の連続撮影になるため、映像情報量は膨大になるため、
なんらかの圧縮がなされています。

圧縮方式にはさまざまな要素を含んでおり、ここでは「圧縮方式」と「サンプリング方式」を紹介します。

「圧縮方式」には、フレーム内圧縮とフレーム間圧縮の2種類が存在します。
フレーム内圧縮とは、各フレーム内のみ圧縮することでサイズを小さくする方式。
フレーム間圧縮とは、時間圧縮とも言われるもので、フレーム内にこだわらず、前後のフレームの差分のみを情報として
持つことにより、同じデータ情報を前後のフレームで共有することによってかなりの圧縮が可能となります。
当然、圧縮効率はフレーム内圧縮よりもフレーム間圧縮のほうが高いです。
代表的なものとして、フレーム内圧縮はHDCAM SRやPRORES422、フレーム間圧縮は、H.264です。
当然、合成は圧縮負荷の少ないフレーム内圧縮の方が適しています。

「サンプリング方式」とは、輝度と色解像度の部分で、どの部分を間引いたかを示す呼称です。

RGB4:4:4  映像情報の三原色を維持、解像度では輝度、色ともにベスト。クロマキー合成には理想的方式です。

YCbCr4:2:2  色解像度とデータ量のバランスは良い。クロマキー合成も比較的良好。
業務用としてはハイエンドに位置します。

YCbCr4:2:0  クロマキーでは境界部が荒れやすい。絵柄の高彩度部分で映像が荒れて見えやすい。
H.264のコーデック方式が最も代表的。

YCbCr4:1:1 最低限の色再現性。NTSC方式のDVフォーマットに採用。合成ではブロックノイズが出やすく避けるべき。


ファイルベース(FileBase)

これまで映像におけるデジタル化は進んできましたが、媒体には時間軸で記録を行う磁気テープが使われてきました。
映像はファイル化すると容量が莫大になり、記憶媒体としては容量として追いつけないと考えられてきたのです。

しかし、この数年でブロードバンド化や大容量のHDDが登場することとなり、
テープレス化の動きが本格的になってきました。ファイルベースとは、端的に言えばテープレス化という意味です。

決定的になったのは、やはり地上デジタル化によるハイディフィニッションテレビの普及です。
映像は一般家庭でもテープから内蔵ハードディスクに保存できるようになり、ファイルベースが一般的になっています。

その動きを受け、JAAA「日本広告業協会」は、
平成22年9月に「ファイルベースメディアCM搬入暫定基準」を発表しました。搬入できるファイルベースメディアは、

  1. XDCAM用プロフェッショナルディスク
  2. P2カード
  3. GFPAK

というディスクと半導体メモリーカードとなり、CM搬入のファイルベース時代の本格運用の時代になっています。
今後はその膨大な情報量のデータをいかに安全で効率的にアーカイブしていくかというワークフローが
今後の課題になっています。


収録カード

テープメディアに変わって登場してきた収録カードですが、大きくは業務用専用のメディアと汎用メディアがあります。
専用メディアとは、業務用カメラの専用のため、価格が高く、ドライバーソフトが必要ですが、
汎用メディアカードよりも信頼性が高いことが挙げられます。
業務用としては、SONYのSxS、panasonicのP2、IKEGAMIのGFPAKなどがあります。

汎用メディアでは、DSLRで広く用いられているCFカード(コンパクトフラッシュ)、家庭用HDカメラやコンデジでは
馴染みのあるSDカードなどがあります。


HDD
(Hard Disk Drive)ハードディスクドライブ

磁性体を塗布した円盤を高速回転させ、磁気ヘッドを移動させることで、
情報を記録し読み出す補助記録装置の一種です。
構造は金属性の円盤を回転させ、その上を磁気ヘッドが移動することで磁性体に磁気を与えて「記録」させたり、
「読み取ったり」することができます。

HDDはその構造上、レコードプレーヤーと同じく、メカニカル(機械的)な構造をしているため、ショックに弱い筐体です。
落下等による強い衝撃を受けた場合、ヘッドが円盤面に衝突(一般的にヘッドクラッシュと呼びます。)して、
円盤が傷ついたり、モーター内のベアリングが変形したりしてデータの読み書きが不能になる場合があります。
また撮影では、特に空気圧の変動する場所や大音響のする場所での記録メディアとしては不向きとされています。
また長期の保存を前提にした記録メディアではなく、「半消耗品」と言われています。

アメリカのプロダクションでは、HDDで保存したものを長期保存する場合、BDにデータ保存したり、
LTOに書き込んだりしながら、複数のメディアに分けてバックアップしているケースがあります。


SSD(Solid State Drive)
エスエスディ

正確にはFlashSSDと呼ばれ、半導体メモリであるフラッシュメモリを使用した補助記録装置です。
SSDはハードディスクのように、回転するディスクを持たないため、読み取り装置であるヘッドをディスク上で
移動させる時間が掛からず、また目的のデータをヘッドが読み取るまでの時間がないため、高速に読み書きが出来ます。
またハードディスクのようにメカニカル(機械的)に駆動する部品が無いため、衝撃にも強いと言われています。
また動力をもたないため、HDDに比べ消費電力も少なく、小型化が可能で動作音もありません。

欠点としては、現在のところ、容量あたりの単価は量産しているHDDに比べはるかに高額なため、
HDDに比べ記憶容量が少ない製品が多いと言われています。
またHDDに比べ書き換え可能回数が少なく、上限を超えて使用していると内部の記録素子の劣化が進行し
記憶情報の保持ができなくなる可能性があります。


LTO(Linear Tape-Open)
エルティーオー

IBM,HP,Seagate technologyの3社が共同で策定した磁気テープ記憶装置の規格です。
放送業界がビデオテープの時代からファイルベースの時代に移行する際に、
大容量で低コストの保存メディアとして注目され、支持されている保存アーカイブです。
LTOは、2年から3年ごとにバージョンアップされ、徐々に容量が増えてきています。
現在のLTOは2010年に発売されたLTO5で、容量は1.6TB、転送速度は180MB/sです。
次期LTO6は、3.2TBで、転送速度は270MB/sと言われています。

LTOが放送業界で支持されている理由はその低コストと、ハードディスクや半導体メモリというファイルべースの
バックアップ及びテープという全くの別メディアという安心感でしょう。
今後、後処理のワークフロー時のアーカイブ素材としては最も注目されているメディアです。


SRMASTER

CM業界の完成原板としては圧倒的な支持を誇るSONYのHDCAMSRテープが、業界のファイルべース化に伴い、
移行しつつあります。そのメインのストレージシステムがSRMASTERであり、SRMEMORYです。
2011年度から順次発売予定ということで、256GBから1TBまでの各種メモリーカードが次世代のCM原板に
なるのかもしれません。


画素(pixel)ピクセル

デジタル画像を扱う時の、色情報(色調や階調)を持つ最小単位です。
しばしばピクセルと同一の言葉として使われるドット(dot)は、単なる点情報であり、「.co.jp」と同じ点の意味です。
例えばディスプレイにおいて、320x240ピクセルの画像を100%表示すれば320x240ドットですが、
200%の表示ならば640x480ドットとなります。


解像度(resolution)

テレビやコンピューターのディスプレイの表示や、プリンタの印刷における精細さのことを言います。
走査線の密度や画面を構成する画素の数をタテヨコの積(1024x768など)で表します。

表記としては、1インチ当たりにいくつのピクセル(ドット)が入るかという密度になります。
北米では印刷と映像の表記が異なり、dpi(dots per inch)は、1インチあたりのドット(点)の数を表し、
プリンタや印刷の詳細さを示す解像度の単位です。
映像では1インチあたりの画素(ピクセル)数を表す単位として、ppi(pixcel per inch)で表し、
グラフィックソフトや液晶ディスプレイの表示密度を表す単位として使われています。
ただ国内では、日本語の「画素」という単位で使われているケースが多いようです。


SD
(Standard Definition)

画像解像度企画の一つで、従来のテレビ放送などに用いられている標準解像度信号の名称です。
スタンダード画質の解像度は、720x480画素の345,600個のピクセルの集合です。
ちなみにSDには地域によって方式が異なり、日本や北米がNTSC、
ヨーロッパなどではPAL,SECAMなどの方式があります。


HD
(High Definition)

地デジ化に伴い、今やSDよりもスタンダードになっていますが、依然としてHDと言われています。
HDの画質は、フルHDで1920x1080画素です。ちなみに2Kとは、HDの水平画素数が1920なので、
2K(2000)と言われています。HDカメラはすでに家庭用民生機も含め広く普及しており、10数年前では
考えられなかったMacによるHD編集がごく普通に行われています。
ムーアの法則の確かさを実感せずにはいられません。


4K

水平画素数4000x垂直画素数2000前後の解像度を持つ動画フォーマットの総称を4Kと呼んでいます。
ちなみにフィルムを画素換算するとほぼ4Kに相当します。
デジタルシネマの標準企画DCIが定めた4Kは、4096x2160になります。またHDの4倍の画素数を持つ
QFHDは、3840x2160となり、こちらの企画も総じて4Kと呼ばれています。
4Kの需要はテレビというよりも、むしろデジタルシネマから発達すると予想されています。
解像度もほぼ35mmフィルムに匹敵する画素数なので、編集を含めた周辺機器の充実度合いにより、
飛躍的に需要が高まるかもしれません。

現在、4Kを撮影するカメラとしては、RED-ONEとSONY F65が代表的なカメラです。
収録機器では、計測技術研究所のUDRやアストロデザインのHR-7512-Aなどがあります。


スーパーハイビジョン

NHK技術開発研究所が開発したスーパーハイビジョンは、HDの16倍の画素数という途方もないものです。
7680x4320,音響は22.2マルチチャンネルです。2010年のNHK技研公開で見た際は
東京マラソンのスタートシーンを撮影していましたが、1Tで30秒しかもたないというモンスターカメラでした。
紅白歌合戦で、等身大の出演者をプロジェクターで見ましたが、ほぼNHKホールにいる臨場感があります。
いつ実用化できるのでしょうか。しかし、日本は技術大国、個人の家というよりも公共の場でスーパーハイビジョンを
見る機会は今後増えていくのではないでしょうか。



映像新人のための、映像コラム

 

ピュリツァー賞とMade in Japan



ピュリツァー賞 受賞写真 全記録」(日経ナショナル・ジオグラフィック社)という写真集があります。
この写真集は、米国で最も権威ある報道部門の賞であるピュリツァー賞の創設から
2011年までの受賞作の全てを掲載した本です。
戦場、暗殺シーン、災害など、その年の最も印象に残った一枚を収めています。
その写真には壮絶で、悲惨な写真も掲載されていますが、なかには報道写真であるにも関わらず、
極めて絵画的とも言える感動的な写真もあり、非常に印象的な写真集になっています。

撮影された写真の、ほぼ奇跡に近いそのタイミングで捉えた「決定的瞬間」を見ると、
撮影したカメラマンの技量と勇気に対し、敬意を表さざるを得ません。

さてその「ピュリツァー賞」を受賞した、撮影に使用されたカメラの話です。

この写真集には撮影したカメラの情報が記されています。賞が始まった当初から60年代の初頭までは、
アメリカ製4x5スピードグラフィックの独占状態です。
焚いて発光するフラッシュは一度しか使用できない「一発必中」のプレスカメラでした。
有名な「硫黄島の星条旗」の写真もこのカメラで撮影されました。

その後、もっと機動力のある小型カメラの需要が高まり、ドイツ製2眼式のローライフレックスが登場します。
このカメラはファインダーレンズと撮影用レンズの2つのレンズを上下に配置したカメラで、
当時はスピードグラフィックに比べ、小型軽量であった点、
またローライの廉価版として登場したローライコードがその速写性から報道機関で多用されるようになりました。

そして、現在の35mmカメラの礎を築いたライカが登場します。
35mmフィルムが使用されたいきさつは、流通されている映画用フィルムを
横使いに2コマ分使用する発想で作られ(ウルライカ)、ライカで使用することで
世界的にスティルカメラの定番になりました。
コダックはこのカメラを135フィルムサイズ(24mmx36mm)と名付けることになります。
とりわけ報道カメラマンに支持されたのが、ライカM3というレンジファインダーカメラです。

レンジファインダーとは、撮影レンズの上に工学視差式距離計が組み込まれた小窓のファインダーから
被写体を見ながら撮影するカメラです。
このカメラにより人間のアイレベルで自然に撮影することができるようになりました。
特にM3は当時最高の技術力を駆使して作られたカメラであり、日本メーカーがレンジファインダーカメラを諦め、
一眼レフカメラに集中するきっかけとなる名機と言われています。(M3ショック)
しかし、このことが後の日本メーカーに幸運をもたらします。
ライカは木村伊兵衛が愛用し、ピュリツァー賞受賞の沢田教一の愛機としても有名です。

しかし、1959年日本から、一眼レフカメラの名機、ニコンFが登場すると、
世界中の報道カメラマンから圧倒的な支持を得ます。
報道の世界から「スピードグラフィックとローライフレックスを駆逐した」日本製カメラの登場です。
ニコンFはその堅牢なボディと豊富なレンズ群を選べることから、ライカM3をも凌駕し、
ニューヨークでは一時「ナイコン」は品切れ状態となります。その評判を聞きつけファッション業界、アメリカ軍、
そしてついにはNASAまでもが買い求める世界最高性能のカメラになります。

他国のカメラメーカーもNikonFに挑戦しますが、ことごとく惨敗し、
後に最強のライバルとなるCanonF-1が1971年に登場するまで、頂点に居続けます。
ピュリツァー賞では、1963年Nikonが初登場し、それから徐々に日本製カメラは台頭し始めます。
70年代から90年代にはほぼ9割近くが日本製カメラになり、2000年以降のデジタルカメラ移行期になっても、
なおその勢力は衰えず、ほぼ100%がCanonやNikonという日本製カメラの独壇場になります。

今、世界のカメラ市場を見渡すと、日本製一眼レフカメラと対等に戦えるメーカーは存在しません。
(日本の上位2社で世界シェアの80%と言われています。)
むしろ、日本国内でのメーカー間の熾烈な競争が、他国のカメラメーカーの参入を退けているのかもしれません。

さて、その強さの理由ですが、その他のデジタル機器のようなコモディティ化に侵食されないからでしょう。
ひとつには、精巧な研磨による高精細な描写力を誇る明るいレンズが挙げられます。
ドイツのArriがFUJINONにレンズを委託するほど、日本製レンズは世界一の精度を誇っています。

2012年のNABで話題となったBlackmagicdesignの2.5Kデジタルシネマカメラは、US$2,995という低価格が売りですが、
使用レンズはCanonEFレンズなどの既存のレンズ使用が前提です。
昨今のコモディティ化の要因のひとつがデジタル化ですが、カメラの筐体自体をデジタル化したとしても、
工芸品のような優れたレンズというハードの前では無力です。
デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる」という本がかつて流行りましたが、
レンズはその対極にある「実体」でしょう。
池田信夫氏も書いています。「カメラがいくらディジタル化されても、光を屈折させるのは光学レンズである」と。

次に、毎日のハードな撮影にも耐えうる防塵、防滴を備えた耐久性です。
例えばCanon1DやNikonD4の価格が他の機種に比べ高額である理由は、ひとえにこの耐久性にあります。
コモディティ化の要因のまたひとつにモジュール化がありますが、「自ら研究開発せず、単純に市場から部品を寄せ集め、
組立てることだけ」ではこれらの耐久性は実現できません。
ここにこそ、日本にしかできない「モノづくり」があるように思います。 そしてその耐久性の根底には、
紛争地帯や被災地、または最悪の環境下をカメラマンと共に経験した実績があります。

ですから、カメラマンはその価値に相応しい「適切なコスト」を「Made in Japan」に支払うのです。
それは決して装飾品的な見た目の価値観からではなく、あくまでも「機能に対する正しい対価」としてなのです。
そのために値崩れ(コモディティ化)をおこさず、メーカーは研究開発が続けられ、
さらに進化した製品を消費者に提供できます。これは、購買者と製品との理想の関係ではないでしょうか。

「ピュリツァー賞 全記録」を読んで、改めて日本製プロフェッショナルカメラを開発し、
いまだにプロカメラマンの信頼を裏切らない全てのカメラ開発者、技術者の方々に、畏敬の念を抱かずにはいられません。
そして、今後も優れたカメラを世に送り出してくださることを期待しています。

 

 

館長庵野秀明 特撮博物館展が、開催中です。

ヨコハマで、原鉄道模型博物館が巨大ジオラマをオープンしたと思っていたら、

今度は東京都現代美術館で、「特撮博物館」展がオープンしていました。2012年7月10日~10月8日まで開催。


この企画展は、エヴァンゲリオンの監督で有名な庵野秀明氏が自ら館長となり、

これまでの日本の特撮映画、テレビで使用されたミニチュアを展示した、

映像関係者にしてみれば非常に魅力的な企画展です。


かつての特撮映像は、美術や操演、仕掛けのスタッフが、手作りでミニチュアを作成し、

テグスによる「吊りメーション」で物体を飛ばせ、火薬を使用して火花を出す「職人芸」で成り立っていました。


その後、デジタル技術の発達により、人物のみをグリーンもしくはブルースクリーンで撮影し、

それ以外をCGI(コンピュータジェネレーテッドイメージ)で作成し、それらをデジタル合成する時代になっています。


この移行により、それまでの「職人芸による特撮」は岐路に立たされ、貴重な財産であるミニチュアや

小道具などは散逸し、それを作成するスタッフも途絶えつつあるのが現状です。


しかし、「ゴジラ」が世界中で有名な映画のキャラクターであることからも分かるように、

日本ならではの特撮映像のすばらしさを多くの人に伝えるために、 庵野監督自らが館長となって企画した展覧会です。

言わば「日本の特撮の危機感」からの企画展です。


当初はミニチュアのみを展示することを考えたようですが、副館長である「平成ガメラシリーズ」の特撮監督である

樋口真嗣氏が、 現在の先鋭スタッフで、CGを一切使用しない、ミニチュアによる特撮短編映画を作ることが、

多くの見学者の理解にとって、最もてっとり早いとの意見により、この企画展はスケールアップをしていきます。


実際に場内に入ると、過去のミニチュアや着ぐるみ(スーツ)、セットプランの展示がずらり。

ウルトラマン、マイティジャック、ゴジラ、ガメラ、大魔神などなど、ほぼ日本の特撮を代表するキャラや

小道具のオンパレードです。 特にガメラのスーツはカッコよすぎます。


次には、スタジオジブリ製作による、企画・庵野秀明/巨神兵キャラ・宮崎駿/監督・樋口真嗣という

なんとも贅沢なスタッフによる「巨神兵東京に現わる」が上映されます。

上映時間はわずか9分03秒にも関わらず、さすがジブリ作品です。

(当然トップロールにはトトロのイラストのジブリクレジットが付きます)


ハリウッド映画のCGによるビル破壊シーンが、良く出来た表層的な空気感の映像のような感じがするのに対し、

実際にミニチュアのビルを火薬により破壊し、(重量感を増すために)ハイスピードで撮影するオーセンティックな

撮影にはどこかアナログな「ホンモノ」感を感じてしまいます。

とんでもないトライもしているし、非常に新鮮で面白い映像です。監督が目指したのは、ハリウッドの特撮ではなく、

宮崎アニメやエヴァンゲリオンのアニメの世界観をいかに実写化できるかというのも非常に肯けます。


さすがに日本の当代一流のスタッフがミニチュアの「ホンモノ」を作り、仕掛けの撮影をすれば、こうなるのだなと。

CG合成とミニチュア特撮映像の差異を庵野館長は、「やはり空気だと思います。空気を介在しレンズを通して、

光そのものを写していることじゃないかなと。」(特撮博物館図録より)

ちなみに破壊される東京のセットの多くは、ジブリや庵野氏の事務所に近いJR中央線・阿佐ヶ谷、西荻、高円寺に

したとのことです。


次のフェーズが、この映画のメイキングです。

非常にきめの細かい説明と実に興味深い職人技を見ることが出来ます。

そして、それを手がけるスタッフの方々が実に楽しく仕掛けのミニチュアを組み立ている光景を見ることができます。


そして最後のフェーズ、入場者自身が自らのカメラで撮影する特撮映像のミニチュアセットが待っています。

セットの中には「巨神兵」の映画で使用した西荻窪駅前のミニチュアもあります。

通常美術館で写真撮影はタブーですが、この企画展は最後にあえて見学者にミニチュアセットを撮ってもらうという

すばらしい試みを行なっています。ぜひカメラをご持参ください。

「現美」にはパートナーとご一緒された方がいいかもしれません。

仲間をミニチュアセットの中に立たせ、撮影できるのです。こんなチャンスはめったにありませんから。





プロの映像屋が作るミニチュアセットで、カメラを構えてファインダーを見ると、

実に画が切り取りやすく作られていることが分かるでしょう。ほんとに誰もが「円谷英二」になれるかも、です。

しかし、こんな楽しい、しかも勉強になる「映像学校」があったら、もっと多くの若者が映像業界に

入っているのだろうなと感心した次第です。「現美」、結構イケてます。



この企画展は、映像を志す方々にはぜひとも行っていただきたいと切に思います。行って損はしません。

そこでは日本の特撮映像の先達の優れた知恵、ノウハウ、センスを楽しみながら味わえます。

本当にすばらしい企画展です。

 

 

愛情溢れる映画ガイドとして


父と息子のフィルム・クラブ」デヴィッド・ギルモア


カナダの映画評論家、デヴィッド・ギルモアが書いた感動のノンフィクション。

15歳で学校を中退してしまった息子のジェシーと、父であるデヴィッド・ギルモアが過ごした3年間の実話です。

ドロップアウトした息子にギルモアはこう言います。「わかった、じゃあ、おまえがハイスクールをドロップアウト

するのを認めよう。ただし、条件が二つある。一つ、麻薬には絶対に手を出さないこと。二つ、これから私と一緒に、

週に3本、私の選んだ映画を見ること。」


本書の内容は、息子の人間関係を父親が真正面から受け止め、互に悩みながら克復していく愛情溢れる実話です。

その話は本書にゆずるとして、ここではその風変わりな「息子再生教室」とも言うべき「Film Club」の上映内容です。

3年間、彼ら二人は映画を120本見続けます。その映画のバラエティに富んだセレクションがとてもユニーク。

まずデヴィッドが息子に見せた映画1作目は、フランソワ・トリフォーの「大人は判ってくれない」。

学校をドロップアウトした息子に贈る映画としては非常に正しいチョイスでしょう。


フィルムスクールであれば、エイゼンシュタインの「戦艦ポチョムキン」とグリフィスの「イントレランス」を見せて、

各々のモンタージュ理論をレクチャーするようなアカデミックスタイルもあるでしょうが、この映画を最初にあげる

フィルムスクールがあってもおかしくないチョイスです。


しかし、息子が彼女のことで思い悩み映画に集中できなかったことから、2回目の映画をシャローン・ストーン主演の

「氷の微笑」にしてしまいます。世界中のフィルムスクールの中で、もしくは映画学校、クラブの映画研究会の中で、

トリフォーの後に、「氷の微笑」を見せる学校は絶対にありえません(笑)。

当初、ジェームスディーンも知らなかったジェシーの面白い映画のリアクションがここから始まります。

全ての映画を列挙するのはさすがに出版社に失礼なので、ピックアップしてみます。


例えば、面白いチョイスとして「屑とわかっていながら好きになってしまう」おバカ映画も入っている点。

「ブリティ・ウーマン」「ロッキー3」などなど。おそらく由緒ある映画ガイドではランキング外の映画も

堂々と見せている点、面白いです。


また、ホラー映画週間と銘打って数々のホラー映画を見せるのですが、最後の最後に、あのホラー映画の最高傑作

「エクソシスト」を息子に見せ、親子共々もうこれ以上、ホラー映画は当分見たくないとノックアウトされる場面です。

特にジェシーは部屋中の明かりをすべて点け、明るい状態の居間で就寝するほどの怖がり様は、昔見た本作の怖さを

思い出させてくれました。勉強になったのは、エクソシストの悪魔のモデルのヒントになったのは、我が日本映画、

新藤兼人監督の「鬼婆」であったということ。さすがにプロの映画評論家です。

我が日本映画では他にも黒沢明の「乱」が入っています。


また著者は、息子が狂喜するだろうと思い、自信満々になって見せたビートルズの「ハード・デイズ・ナイト」

(旧邦題:ビートルズがやって来る/ヤァ!ヤァ!ヤァ!)のリアクションも面白いです。


「これを見たジェシーはあっさりと言った。「ひどい映画だね。特にジョンレノンの演技は最低だね。」(中略)

「まさか。私は呆然として言葉を失った。」あまりにしょげている父親を逆にジェシーは慰めています。

こんな親子のジェネレーションギャップも微笑ましい可笑しさです。


さすがに評論家らしい渋いチョイスがあります。スピルバーグの監督デビュー作「激突」、マーティン・スコセッシの

初期傑作「ミーン・ストリート」。「ET」や「タクシードライバー」でないのが、カッコイイです。

名作も傑作も駄作もさまざまな観点からピックアップしていますが、ハリウッドの戦争映画やSFX映画がほとんどないのも

好感が持てます。唯一あったのがリドリー・スコットの「エイリアン」でしょうか。またこのセレクションには、

プロパガンダや宗教的な意図、変なイデオロギー色のある映画は一切ありません。当たり前ですが。


この120本のチョイスには多くの人が不満を持つはずです。まるでオーセンティックなチョイスではありませんから。

でも、筆者は当然織り込み済み。それよりもなによりも息子ジェシーが再生する映画チョイスなのです。

でもその意外なチョイスだからこそ、生身の息子と対話を前提に見せる「本音の映画選び」を味わうことができます。


とはいえ、さすがにプロが直に教える映画レクチャーです。後半にはこんな親子の会話があります。


「わたしがCBCの全国ネットで映画批評をしていた頃より、いまのおまえのほうがずっと映画に詳しいよ」

(中略)

「いまパッと考えて、フランスのニュー・ウェイヴ映画の特徴を三つあげるとしたら、どんなものになる?」

(中略)

「ええと、まず低予算で撮ったこと---?」

「そうだね」

「流れるようなカメラワーク---?」

「そうだな」

「カメラがスタジオの外に出て、街頭で映画を撮ったっていうこと?」

「じゃあ、ニュー・ウェイヴの代表的な監督を三人あげるとしたら?」

「トリュフォー、ゴダール、それとエリック・ロメール」

「ニュー・ウェイヴをフランス語でいうと?」

「ヌーヴェル・ヴァーグ」

「ヒッチコックの「鳥」で、好きなシーンは?」

「ティッピ・ヘドレンの背後に閑散とした遊園地が映っていて、次の瞬間、そこに鳥がうじゃうじゃいるシーン」

「どうしてそのシーンがいいんだい?」

「これから何やら不吉なことが起こるぞ、って観客に知らせているから」

「で、それはふつう何と呼ばれている?」

「サスペンス。ヒッチコックが「汚名」で、二つ目の螺旋階段を作らせた目的と似ているんじゃないかな」

(中略)

「じゃあ、イングリッド・バーグマンのご贔屓だったカメラマンは?」

「それは簡単だな。スヴェン・ニクヴィストだよね。」

(中略)

「優れた映画を構成するものは何だと、ハワード・ホークスは言っただろう?」

「三つの面白いシーン、それとつまらないシーンが一つもないこと」

(中略)

「最後の質問だ。これも正解だったら、ディナーを奢ろう。

「ニュー・ハリウッド・ムーブメント」の代表的な監督を三人あげてごらん」

ジェシーは人差し指をのばした。「フランシス・コッポラでしょう」

---すこし間を置いて---

「マーティン・スコセッシ」

---もっと長い間を置いてから---

「それと、ブライアン・デ・パルマかな」

ひと息ついて、私は言った。「ほら、なれるだろう、評論家に?」


しかしこのような「知識」よりも、デヴィッド・ギルモアが「フィルムクラブ」を止めなかった理由は、文学や音楽と同様、

「映画という視覚芸術」が、息子の魂の成長を促してくれるに違いないという、「映画」に対する揺るぎない信頼と自信が

あったからでしょう。


「いわゆる通常の映画ガイド」ではチョイスされない、映画評論家の前に一人の男として、もしくは親としての

映画ガイドも、映像制作をする上で、何かお役に立つかもしれません。

ちなみに本書は24の言語に訳されたベストセラーです。日本語訳も秀逸です。翻訳の高見浩氏の最後の文章には、


「文中、作者のギルモアが映画中のシーンを叙述するくだりでは、可能な限り実際の作品を見直して描写の正確を期したが、

「ヴォルケーノ:マルカム:ラウリーの生と死を追って」「レイト・ショー」「エディ・コイルの友人たち」等、どうしても

見る機会を得られなかった作品が数点残ってしまったのは心残りである。いつか必ず見てみたい。」で終わっています。

まさにプロフェッショナルな言葉です。


本書のラストに「フィルム・リスト」があります。これをコピーしてTSUTAYAさんに行くのも一考です。

機会があれば、書店や図書館でご覧になってはいかがでしょうか。



 

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